中澤英雄さんからの投稿メッセージ

宇宙からのメッセージに耳を傾けよ――スペースシャトル事故と迫り来るイラク攻撃

中澤英雄(東京大学教授・ドイツ文学)
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スペースシャトル・コロンビア号が、2月1日、大気圏に再突入する際に分解し、7人の宇宙飛行士が死亡した。これは1986年のチャレンジャー号の打ち上げ失敗につづく、シャトル二度目の大事故である。亡くなった宇宙飛行士の方々とご家族の皆さんには心から哀悼の意を表したい。

この事故は、調べれば調べるほど、不思議な出来事だという感じがする。調べるといっても、事故の原因調査のことではない。事故原因は、いずれ専門家が明らかにしてくれるだろう。

不思議というのは、このショッキングな事故の背景から否応なしに浮かび上がってくる、とうてい単なる偶然とは考えられない、不思議な意味の布置である。

この事故は、計画されているアメリカのイラク攻撃の直前という時点で起こった。このタイミングがまず不思議である。イラク攻撃は、911事件の延長線上で計画されている。事故で亡くなったアメリカ人女性飛行士ローレル・クラークさんの従兄弟は、911事件で死亡している。この3つの間に何か不思議な関連を予感した人が、かなりいたのではないだろうか。その関連を解き明かすのが本稿の目的である。

▼アメリカ、イスラエル、インド

7人の宇宙飛行士の中には、アメリカ人以外の飛行士が2人いた。イスラエルの軍人イラン・ラモン氏とインドの女性科学者カルパナ・チャウラさんである。チャウラさんは、アメリカ人と結婚しアメリカ国籍になっていたが、インド生まれであり、インド国民も自国の英雄として熱い声援を送っていた。それは、毛利衛さんを声援した日本人の心情とかわるところはないだろう。

アメリカ、インド、イスラエル――この3カ国には、現在の国際政治の中でいくつもの共通点がある。

まず、3カ国とも現在、熱心に「テロとの戦い」を行なっている。アメリカの敵はアルカイダとイラクである。イスラエルの敵はパレスチナ人である。インドの敵はパキスタンである。彼らの敵はいずれもイスラム教徒である(イラクにもパレスチナにもパキスタンにもその他の宗教の信仰者もいるが)。そして、3カ国とも、テロとの戦いを正当化するために、かなりいかがわしい正義をふりかざしている。

アメリカはテロとの戦いと称してアフガニスタンを爆撃した。911事件の犯人がオサマ・ビン・ラディンとアルカイダであったとしても(具体的な証拠はまだないが、それはほぼ確実だろう)、現在の国際法の枠組みの中で、アメリカはアフガニスタンを攻撃する権利があるのだろうか。アフガニスタンはアメリカに攻撃をしかけたわけではない。オサマ・ビン・ラディンをかくまったことがいけないというのであれば、今後は、アメリカが危険と見なす人物や組織が滞在しているというだけで、その国はアメリカに爆撃されることになる。

現在アメリカは声高にイラク攻撃を唱え、「ゲームは終わった」とイラクに最後通牒を突きつけているが、イラクはアメリカに攻撃をしかけたわけでもないし、その能力もない。アメリカのイラクへの先制攻撃は、戦後、国際社会が築きあげてきた国連中心の平和維持システムを崩す危険な行為である。武器査察団のこれまでの調査によっても、イラクがアルカイダと協力している具体的証拠も、イラクが大量破壊兵器を保持しているという決定的な証拠も何一つ見つかっていない。もちろん、イラクが生物化学兵器を隠し持っている可能性はゼロではない。それならば、時間をかけて査察をもっと徹底し、見つかった時点で破棄させればよいだけのことである。しかし、具体的な証拠もないのに、「持っているに違いない」「怪しい」「将来何かしでかす可能性がある」という理由で、イラクへの先制攻撃が認められるのであれば、今後、中国が台湾や日本を同じ理由で先制攻撃することも許されることになる。インドがパキスタンを先制攻撃することも許されることになる。すべての国が、敵国を怪しいと思った時点で、先制攻撃することが許されることになる。アメリカは世界をそういう恐ろしい状況へと導こうとしているのである。

この予防的先制攻撃のひな形は、1981年に起こった、イスラエルによるイラクの原子炉への空爆であると言われている。イスラエルは、イラクが原爆を作るかもしれないとして、イラクを急襲し、原子炉を破壊した。イラクはイスラエルに攻撃をしかけたわけではなかった。原爆を持つと危険だという理由で、イスラエルはイラクを先制攻撃したのである(だが、イスラエルはすでに原爆を持っている)。この空爆は明らかに国際法違反である。ブッシュ政権は今、同じ理屈を使ってサダム・フセインへの攻撃をしかけようとしている。

アメリカは、自国にはそういうことが許されていると思っているのだろうか。それでは、国際社会の中でアメリカが裁判官と検事と警官と死刑執行人を同時に務めるようなものである。こんなことが一国の中で起こったら、どんなに異常で危険なことか、ということはすぐにわかるはずであるが、そんな無理を正義と言いくるめてごり押ししているのが現在のアメリカである。

イスラエルがパレスチナ人に対して行なっているのは、一種のアパルトヘイト政策である。イスラエルはパレスチナ人のテロを非難するが、そもそも先住民族パレスチナ人の土地を奪い、彼らを自暴自棄的な自爆テロに追いやったのは、イスラエルである。パレスチナを占領したイスラエルに対して、国連はたびたび撤退の決議を行なっているが、イスラエルはそれをことごとく無視している(イスラエルの国連決議無視は29回に及ぶという)。イラクは国連決議に従っていない、とアメリカやイスラエルは非難するが、まさに目くそ鼻くそを笑うようなものである。

民間人を無差別に狙うテロが誤った行為であることは当然である。しかし、そのような絶望的行為がなぜ生じてくるのかという、その根本原因を解明し、それを解決しないことには、テロはなくならない、とブダペストクラブ会長のアーヴィン・ラズロー博士は指摘している(出典はこちら)。

だが、アメリカもイスラエルも、みずからの政策の過ち、自らの責任を反省することなく、表面に現われたテロという現象のみを力で撲滅しようとしている。それは、病気の根本原因を治療することなく、表面に現われた病状だけを抑え込もうとしているのに等しい。それでは、病気はますます悪化するだけである。

ヒンズー教国インドがイスラム教国パキスタンと軍事対決をつづけていることは、よく知られている。両国の間のトゲになっているのはカシミール問題である。カシミール問題の原点は、印パの分離独立の際に、カシミール地方の帰属を問う住民投票をインドが拒否したことである。住民投票が行なわれれば、イスラム教徒が大多数を占めるカシミール住民は、とうぜんパキスタンへの帰属を望むが、インドはカシミール地方を手放そうとはしなかった。大国の領土欲、権力欲である。カシミール問題が原因となって、印パの間ではこれまで三度にわたって戦争が起こった。昨年は、アフガン問題に刺激され、イスラム過激派がカシミール地方やインド各地で度々テロを行なったので、印パ間の緊張が極度に高まり、一時は核戦争の危機さえもささやかれた。

そう、核である。3カ国とも核兵器を保有する軍事大国である。3カ国とも核兵器を含む巨大な軍事力によって、敵を威嚇し、敵をねじ伏せようとしている。そして最近は、いざとなれば核兵器を使用することさえためらわない、と公言するまでになっている。恐ろしいことだ。

▼3カ国の軍事協力関係

この3つの軍事大国の代表が同時にスペースシャトルに搭乗したのは、偶然なのだろうか。

そもそも宇宙開発は当初から米ソの軍拡競争によって動機づけられていた。スペースシャトルも当然、科学の発展や宇宙ステーションの建設という平和目的ばかりではなく、軍事的な目的のためにも利用されていた。Yoichi Clark Shimatsu氏は、アメリカ、イスラエル、インドの間に軍事協力関係があったことを指摘している(出典はこちら)。

アメリカとイスラエルが密接な軍事協力を行なっていることは、すでに有名である。イスラエルの軍事技術はアメリカのミサイルに使われているし、アメリカの戦闘機やヘリコプターは、イスラエル軍によるパレスチナ住民への攻撃に使用されている。

イスラエル人ラモン氏は、1970年代にユタ州の空軍基地で戦闘機パイロットの訓練を受けた。1973年には第4次中東戦争(ヨム・キプール戦争)にパイロットとして参戦。1981年にはイラクの原子炉爆撃に参加。1982年にはレバノン侵攻に参戦(このとき、シャロン現イスラエル首相が、数千名のパレスチナ難民の虐殺を命令したと言われている。そのためシャロン氏はベルギーで戦争犯罪人の告発を受けている)。このような経歴は、イスラエル人にとってはまさに愛国の英雄であろうが、パレスチナ人やイラク人などにとっては、憎むべき敵ということになるであろう。

Shimatsuによれば、ラモン氏のシャトル搭乗は、アメリカとイスラエルの友好を示す単なる象徴的な意義にはとどまらないという。ラモン氏がシャトルで行なった研究の一つは、地中海沿岸地方の砂塵の調査である。これは、砂塵に隠れた敵をスパイ衛星によって発見するという軍事目的に直結している。

またインド人チャウラさんの専門は、ロボット工学と航空力学で、彼女の研究は、垂直離着陸戦闘機ハリヤーや戦闘ヘリコプターの開発とかかわっている、とShimatsu氏は述べている。

アメリカとイスラエルの軍事協力ほど知られてはいないが、イスラエルとインドも軍事協力を行なっている。イスラエルの軍事教官はインド人兵士を訓練し、カシミール地方のイスラム教徒の反乱を抑え込むために、ガザやヨルダン川西岸でパレスチナ人を弾圧した方法を伝授した、とShimatsu氏は指摘している。さらに田中宇氏は、イスラエルがインドの核兵器開発に協力してきた可能性が強い、と示唆している(出典はこちら)。

イスラエル人がシャトルに搭乗するということで、今回の打ち上げは、テロを警戒して、以前にも増して厳しい警備の中で行なわれた。インド人もパキスタンのテロリストの標的となる可能性があったわけである。

しかし、今回の事故が、テロリストの工作やアメリカに敵対的な国のミサイルによって引き起こされたものではないことは、アメリカ政府も認めている。

▼天の警告

さて、筆者が拙稿の冒頭で述べた「単なる偶然とは考えられない不思議な意味の布置」とは、これまで述べてきたような、3カ国の間の具体的な軍事協力関係のことではない。自分たちの責任を棚上げにして「テロとの戦い」に邁進するこの3つの軍事大国に対して、大事故という形で天が警告を発しているように見えることである。

分解したコロンビア号の残骸が雨あられと降ってきたのは、テキサス州であった。テキサス州は言うまでもなくブッシュ大統領の地盤である。そして、コロンビア号の爆発音が最初に聞こえたのが、テキサス州のパレスタイン(Palestine=パレスチナ)という町の上空だった。このことを、イスラエルの新聞は驚きをもって報じている(出典はこちら)。

これは、偶然にしてはあまりにもできすぎた一致である。では今回の事故は、事故直後にイラクの人々が口々に述べたように、イスラム教徒を弾圧する国々に対する「神の与えた罰」なのだろうか。

ここで、どうしても「神」という問題についても触れなければならなくなる。それは、アメリカ、イスラエル、インドの3カ国とも、宗教国家といってもいいほど宗教に強く影響された国であるからであり、それがまた世界平和を脅かしている大きな要因の一つとも考えられるからである。そう、宗教の力が強いということもまた3カ国の共通点である。

▼神とは

筆者は、神なるものが存在するならば、それはイスラム教とか、キリスト教とか、ユダヤ教とか、ヒンズー教などといった特定の宗教を依怙贔屓するはずはないと思っている。神は万人にとっての神であり、特定の宗教の信者に、その宗教を信じているというだけで、報償や罰を与えたりするはずはないと考える。だから筆者は、神(アッラー)が3カ国に罰を与えたとは思わない。

筆者は、神というのは宇宙の法則の別名だと思っている。宇宙の法則に違反すれば、いかなる宗教の信者であっても、それなりのしっぺ返しを受けるだけのことである。仏教やヒンズー教では、この宇宙法則はカルマの法則と呼ばれている。

唯物論国家ソ連の宇宙飛行士が「宇宙には神はいなかった」と言ったというのは、事実なのかジョークなのか、筆者は確かめていない。このような言葉が生まれてくるのは、神を擬人化しているからである。しかし、神というのは、髭をはやして、玉座に座っているおじいさんではない。神とは宇宙そのものであると思う。

人類は宇宙の法則を解明し尽くしたわけではない。大宇宙の発生についてはビッグバン理論があるが、これは推量的仮説にすぎない。物質の究極は今なお不明である。いかに遺伝子の解析が進んでも、どのようにして生命が誕生したかはいまだ謎である。そして、物質体である人間にどのようにして心の働きがあるのか、ということもわからない。人類がこれまでの科学で解明しえた諸法則は、宇宙の法則のほんの片鱗にすぎない。

宇宙を成り立たせ、万物を司っている偉大なる法則のことを神と呼ぼう。神という言葉がいやならば、遺伝子研究の村上和雄博士にならって「サムシング・グレート」と呼んでもかまわないが、ここでは簡便化のために神という言葉を使うことにする。

神(宇宙法則)の実体はかぎりなく深く、はてしなく高いが、その根本属性の一つは「大調和」ということはたしかだと思う。小はミクロの素粒子のレベルから、大は太陽系、銀河系、島宇宙まで、万物は調和によって成り立っている。調和が崩れたように見えたときは、それを補うための力がすぐに働き、調和が回復される。調和からはずれたものは、やがて消滅する。

人類も地球という宇宙の星の中で生きている以上、人間社会もやはり宇宙法則と無縁ではありえない。調和という宇宙法則を人間の領域に引き寄せれば、それは公正、バランス、平和ということになるであろう。極端な貧富の差、権力の集中、人種差別、戦争や闘争はすべて不調和であり、宇宙法則に反した事態である。このような不調和はいずれ時の流れの中でバランスされ、いやおうなしに調和の方向にもって行かれるに違いない。いわゆる因果応報とは、作用・反作用という宇宙のバランス作用の宗教的表現にすぎない。

今では神が天にいると信じている人は少ないかもしれない。しかし天、すなわち宇宙空間は、やはり地上とは違った不思議な空間である。神聖な空間と言ってもかまわないと思う。立花隆氏の『宇宙からの帰還』によれば、宇宙空間で神秘体験をする宇宙飛行士がときどきいる。神秘体験とまでは言わなくとも、大部分の宇宙飛行士は、宇宙空間に出ることによって、地球への意識が大きく変わるようである。今回が2度目の宇宙旅行となったチャウラさんは、出発前、「宇宙は一度行くととりこになる」と述べていた。

その神聖な空間を、世界の真の平和と人類全体の幸福のために利用するのであれば、天はこれを許しもしよう。しかし、宇宙空間を、自国の覇権を確立したり、他国、他民族を抑圧したりという軍事目的で利用することは、まさに天を汚す行為ではないか。このような行為は、神の調和の法則とは相容れない。そういう行為は、不調和なるものとして、いずれ宇宙から排除されざるをえないだろう。

▼宇宙の中でのユダヤ教儀式

ところで今回、宇宙空間の中で宗教儀式を執り行なった宇宙飛行士がいる。イスラエル人ラモン氏である。

ラモン氏が、祖国イスラエルのために戦った軍人であったことはすでに紹介した。彼はまた、ホロコーストの生き残りの子孫として有名であった。

イスラエル人初の宇宙飛行士としてコロンビアに乗り込んだ同国空軍大佐のイラン・ラモンさん(48)は、1枚の鉛筆書きの素描画を宇宙に携えていった。

14歳のユダヤ人ペトル・ギンツ少年が第2次大戦中にチェコスロバキア(当時)の強制収容所で描いた《月の風景》。ラモン大佐が《ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に関するものを宇宙に持っていきたい》と、ホロコーストの記録を集めるエルサレムのヤド・バシェム博物館に依頼し、博物館がこの1枚を選んだ。

祖父を強制収容所で亡くし、祖母と母親もアウシュビッツからの生還者。ラモン大佐は《苦難の歴史を背負ったユダヤ人の代表》として宇宙に飛ぶことに特別の思いを抱いていた。飛行前のインタビューでは《とりわけホロコースト経験者は、自分の飛行に特別の思いを抱くはずだ》と語っている。

(出典はこちら)

朝日新聞のこの記事にもあるように、ラモン氏はアウシュヴィッツからの生還者の子である。彼はさらに、ホロコーストの生存者の手紙を宇宙船に持ち込み、アメリカ人宇宙飛行士デビッド・ブラウン氏に読ませさえした。

彼はまた、熱心なユダヤ教徒でもあった。宇宙船の中でも彼は、ユダヤ教の規定に従ったコーシェル(清浄)な食事をとっていた。彼はユダヤ教のトーラー(律法)の小さな巻物をシャトルに持参した。このトーラーのもとの持ち主は、ナチの強制収容所で死んだラビだという。ユダヤ教では金曜日の夜が安息日とされているが、安息日にはシャトルの中で礼拝をした。彼はイスラエルの上空ではシェマー(「聞け、イスラエルよ」)というヘブライ語の祈りを唱えた。

ホロコーストとユダヤ教は、現代イスラエル人のアイデンティティのよすがであり、またイスラエルに対する国際的同情をひきつけるための肯定的記号でもある。この記号をイスラエルは戦後、最大限に利用してきたし、今でも利用している。強制収容所から宇宙にもたらされたトーラーは、イスラエル人は迫害を受けた受難の民であり、その堅固なる信仰によって生き延びたというイメージを作りだす。まして、その持参者がホロコーストの関係者であれば、その効果は満点である。ホロコーストの記憶を宇宙の中にまで持ち込もうとするイスラエルのしつこいまでの意志には驚かされる。ラモン氏はまさによきイスラエル人の代表としてシャトルに送り込まれたのだ。

このように、イスラエル国家は自分自身を受難者として演出するが、その受難はすでに半ば過去の歴史に属しつつある。イスラエルの現実の顔は、アパルトヘイトの実行者という抑圧者のそれである。イスラエルが代表的イスラエル人に託して隠蔽しようとしていた暗い側面が、パレスチナであった。しかし神は、宇宙空間でのユダヤ教の儀式などは喜ばなかった。そもそも、金曜日の「夜」などということが、宇宙空間では無意味であろう。そういう地上的な宗教観念を宇宙に持ち込むことに、筆者は強い違和感を感じる。神は、偏狭なユダヤ教観念には応えず、逆にシャトルをパレスタインという町の上で爆発させることによって、イスラエル国民に、パレスチナ問題の公正な解決こそ神意であることを教えているように見える。

このような解釈は、聖書に照らしてみても許されるだろう。なぜなら、旧約の預言者たちはたびたび、神は宗教儀式などは喜ばず、「悪を行なうことをやめ、善を行なうことを学ぶ」(イザヤ書第1章)ことこそ望んでいる、とユダヤ民族に伝えているからである。シャロン政権がいま行なっている政策を、ユダヤの預言者たちはとうてい「善」とは認めないだろう。

▼アメリカのキリスト教原理主義者

アメリカ人が宗教に熱心であることはつとに有名である。アメリカのキリスト教勢力は政治に強く介入する。園田義明氏は、ブッシュ政権の背後には狂信的な宗教右翼(キリスト教原理主義者)の影がちらついていることを指摘している。彼らは、「ヨハネ黙示録」に描かれているハルマゲドンの予言を信じ、世界最終戦争=核戦争が起こることを「待望」さえしている。現在のイラク危機は、彼らによって演出されている可能性がある(出典はこちら)。

彼らの心性は、ハルマゲドンを自作自演しようとしたオウム真理教のそれと違わない。そういう人々が超大国アメリカの政治に影響を及ぼしているのである。

このようなキリスト教原理主義者たちは、イエス・キリストの心に背くことはなはだしいと言わなければならない。イラク攻撃に狂奔するブッシュ大統領は、「汝の敵を愛せ」という有名な言葉を覚えているのか。

先の湾岸戦争の際には大量の劣化ウラン弾が使われ、その放射線被害にイラクでは多くの子供たちが苦しんでいるという。今度イラク攻撃が行なわれれば、もっと多くの罪なき一般国民が殺されるだろう(出典はこちら)。

スペースシャトルが空中分解し、その有毒な残骸がテキサス州にばらまかれたのも、ブッシュ大統領とアメリカ国民への天からの警告と見ることができる。もし神と正義の名においてもう一度イラクの一般国民を大量虐殺したあかつきには、神はもはやそれを決して許さない、という警告である。次に起こるのは、もっと大きな事故かもしれないし、自然災害かもしれないし、テロリストによる攻撃かもしれない。おごれる者は久しからず。アメリカは今、神の道を外れ、自滅の道を突き進んでいることを知らなければならない。

もう一つの宗教国家インドについても触れておかなければならないだろう。インドは多民族、多宗教国家であるが、その中で最大の勢力を誇っているのはヒンズー教である。昨年は、インド北部のアヨーディアという町にあったモスクの跡地にヒンズー教の寺院を建てる計画をめぐって、ヒンズー教徒とイスラム教徒との対立が激化し、千名近いイスラム教徒が虐殺された。宗教対立がインドの宿痾である。

チャウラさんは北インドのハリヤナ州の出身で、パンジャブ工科大学で学んだ。ハリヤナ州は元来、イギリス植民地時代はパンジャブ地方の一部だった。1947年に印パが分離独立する際に、イスラム教徒の多い地方はパキスタン・パンジャブ州に、ヒンズー教徒の多い地方はハリヤナ州に、シーク教徒の多い地方はインド・パンジャブ州になった。パンジャブ地方のすぐ北にあるのがカシミール地方である。カシミール地方はイスラム教徒が圧倒的多数を占めるにもかかわらず、藩王がヒンズー教徒であったために、インドに帰属させられた。チャウラさんの出身地、勉学地にもインドの複雑な宗教問題、国境問題が影を落としている。チャウラさんの死は、この問題を解決せよ、というインド人とパキスタン人に対するメッセージのようにも思える。

神とは大調和であり、平和である。いくら「神よ、神よ」と神を呼んでみても、異民族を圧迫し、異信仰者を抑圧し、敵を武力によって殺す者は、神のみ心にかなわない。アメリカもイスラエルもインドも、誤った宗教観念によって政治を誤り、世界を危機におとしいれている。これも3カ国の共通点である。

▼宇宙飛行士たちのメッセージ

ただし、事故で死んだ宇宙飛行士個人に罪はない。個人は、国の代表として宇宙空間に送り込まれただけである。天を汚したのは、国であって、個人ではない。

ラモン氏が典型的なイスラエル人であることはすでに見た。しかし、神秘なる宇宙空間に滞在することによって、彼は次第にイスラエルという国境をも超えしまったように見える。

彼は、シャトルから行なったシャロン首相との対話で、強制収容所からもたらされた例のトーラーを示しながら、最初にこう述べた。

この品はまさに、恐ろしい時代にもかかわらず、すべてを超えて生き残るユダヤ民族の決意を表わしています。暗黒の日々を超えて、希望と救済の時代に到達するという決意です。

これはまさにイスラエル人としての言葉だ。だが次に彼は、宇宙から見た地球の様子を尋ねられて、シャロン首相にこう伝えた。

お伝えしたいと思いますが、ここから私たちが見ることができるものは、驚異的です。私たちの惑星、地球は美しい。ほんとうに美しい。その中で私たちが生きることが許されている大気圏はとても薄いのです。夜になると、大気圏からの一種の反射を見ることができます。私たちはこれを心を込めて守らなければなりません。

(出典はこちら)

どんな人間の中にも、国家・民族の一員という相対的個別性と、人類の一員という普遍性が同居している。ラモン氏はまさにイスラエル人としてシャトルに搭乗したが、宇宙空間は彼に、民族と国境を超える、地球人類の一員としての視点をもたらしたのだ。

彼が希求したイスラエルの生き残り、希望と救済も、不公正を正当化する軍事力によっては決して達成されない。剣によって立つ者は、剣によって滅ぶ。イスラエルの真の平和は、すべての民族を、同じ地球に住む兄弟姉妹と見る神の心を実践したときにのみ成就されるであろう。

このような普遍意識は、ラモン氏だけではなく、多かれ少なかれ、7人の宇宙飛行士すべてに訪れたのではないだろうか。ラモン氏の手紙によってホロコーストにショックを受けたブラウン氏は、地上の悲惨な出来事にもかかわらず、地球の美を肯定する。彼は、「私が宇宙の中で生まれていたならば、これまで宇宙を訪ねたいと思っていた以上に、もっと強くこの美しい地球を訪ねたいと思うことでしょう」とEメールの中で述べた(出典はこちら)。

また、ローレル・クラークさんが事故の直前に地球に寄せたEメールは、それ自体が地球の美を讃える一篇の詩のように思える(出典はこちら)。

▼宇宙からの「イマジン」

宇宙飛行士たちは赤チームと青チームの二班に分かれ、交代で作業を行ない、睡眠を取っていた。起床の際には、地上から飛行士の好きな曲を送って、モーニングコールとしていた。

アメリカ人飛行士ウィリアム・マックール氏が選んだ曲は、ジョン・レノンの「イマジン」だった。

〔特定の宗教信者だけが入れる〕天国なんかないと想像してごらん
そんなことはやってみれば簡単なんだ
地面の下には〔異教徒が堕ちる〕地獄なんかない
僕らの頭上に広がるのは美しい空だけだ
〔宇宙は信仰の違いを超えて万人を包容する〕
すべての人々が〔未来や死後のことを思い煩わず〕今日の
一瞬を真剣に生きているのを想像してごらん

国なんかないと想像してごらん
難しいことじゃない
殺したり死んだりする理由もなく
宗教もない
すべての人々が平和に生きているのを
想像してごらん

財産なんかないと想像してごらん
君にできるだろうか
欲張ったり飢える必要もなく
人類はみな兄弟姉妹
すべての人々が全世界を分かちあっているのを
想像してごらん

君は僕のことを夢想家だと言うかもしれない
だけど僕ひとりじゃない
いつの日か君も僕たちの仲間になって
世界が一つになれたらいいと思う

「イマジン」は、911同時多発テロ発生以降の世界情勢の中で、米英のアフガン攻撃やイラク攻撃に反対し、平和を求める人々の願いを託した歌になっている。レノン夫人のオノ・ヨーコさんは、アフガン爆撃開始直前の2001年9月25日に、ニューヨーク・タイムズ紙に「すべての人々が平和に生きているのを想像してごらん」という全面1行だけの広告を出した。マックール氏は、この曲の現在的意味を十分に知った上でこの曲を選んだように思える。というのは、彼はシャトルからアメリカ国民に向かってこう述べたからである。「国境のない地球はほんとうに美しい。どうか地球が平和であることを望みます」。このとき、ラモン氏もヘブライ語で同じ意味の言葉を述べた。

1992年にエンデバー号に搭乗した毛利衛さんも、「宇宙から見ると地球には国境がない」とおっしゃっていた。どの宇宙飛行士も、宇宙から見る地球の尊いまでの美しさに息をのみ、そして地球が国や民族や宗教の違いを超えた一つの全体であることを強く感じるようだ。この意識を、イギリスの生物物理学者ジェームス・ラブロック博士は「ガイア意識」と呼んでいる。ガイア意識の獲得こそ、人類生き残りの鍵である。

だが地上では、人類が人為的な相違によって自他を分断し、今なお各地で民族紛争、テロ、制裁戦争、環境破壊をつづけ、母なる地球を傷つけている。なんと愚かなことだろう。

ちなみに、ラモン氏に送られた曲は、ヘブライ語のラブソングだった。

あなたには私の声が聞こえるでしょうか、遠いお方?
あなたには私の声が聞こえるでしょうか、あなたがどこにいても?
私の最期の日はおそらくここでしょう
別れの涙の日が近づいています

(出典はこちら)

事故後、この選曲にイスラエル国民は驚いている。人間にはときどきこういう不思議なことが起こる。ラモン氏は、意識の上では知らなかったが、心の奥深くでは自分の死を予感し、覚悟していたのではなかろうか。

だとすれば、宇宙から寄せられた宇宙飛行士たちのメッセージは、自分たちのいのちとひきかえに地球人類に送った、「戦うな」「平和であれ」「人類は一つであることを知れ」「これ以上地球を傷つけるな」というメッセージである。それはまた、天、すなわち神の言葉でもあろう。

3カ国の指導者と国民は、いやすべての国の指導者とすべての人類は、このメッセージに心して耳を傾けなければならないと思う。

世界人類が平和でありますように。
May Peace Prevail on Earth

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